キリンリキのしっぽのアレが考える

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ようこそ! キリンリキのしっぽには小さな脳がありますが、そんな不思議なしっぽが一生懸命に何かを考えている…そのような眼差しで見て頂ければ幸いです

セントールの悩み 9話 感想

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※©2017 村山慶徳間書店・彼方市思想教育委員会

ネタバレ注意

 

 

「世間で偉人って言われている人の苦悩って。」

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※両棲類人のルソー氏

 

姫乃たちがネット広告などで良く目にする「ジャン・ルソー」は両棲類人

行き倒れている所をフランスの宣教師に拾われたことで、哺乳類人の教育を受けて育ちます。国籍はフランス人。

彼はビジネスで成功しているらしく、貿易会社の社長だそうです。翼人や角人といった哺乳類以外でも、少数の民族が存在することが示唆されたので、ジャン・ルソーのような部族がたくさんいるのか気になりました。

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取引先である翼人の会長と、手の滑りを気にして手袋のまま握手しようとしますが「手袋を取らないのは無礼ではないか」と注意されます。

後に部下からウェットティッシュを差し出された翼人の会長は「君はもっと学ばなければならない」と断るのでした。

 

私は最初、ルソー氏の握手を指摘したのは両棲類人だから嫌がらせをしている・または形態関係なく接するように強い信念を表したのか判断に迷いました。しかし、この翼人の会長は後者のようで安心しましたね。

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ルソー氏は両棲類人との関係性が絶たれておらず、哺乳類人と両棲類人の架け橋のような存在になっている模様

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ルソー氏は哺乳類人との共生を目指すことが重要だと部族に説得しますが、神や宗教の存在、そして伝統と言う名のプライドが邪魔をします。

両棲類人はサスサススールを含む南極人のように自ら学ぼうとしていないようですし、部族の長は哺乳類人を分かり合えない「敵」、排除すべき存在として捉えている。

 

多種多彩な種族がみんな笑顔で生活するなんて夢のまた夢。そのような現実が突き付けられるAパートでしたね。この問題についてはリアル世界でも解決の糸口が見つからない事柄ですよね。救いはルソー氏のように、分かり合おうとする人物が存在することですが…。

 

 

「世間で偉人って言われている人の人生って。」

いきなりBパートでは、今までのセントールの悩みとは雰囲気が全く違う戦争シーンから始まります。

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子どもだろうが容赦なく殺そうとする場面で何とか助かる翼人の少年。しかし少年を待っていたのは、差別される人種を収監する強制労働収容所でした。

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もう、観るのが辛くなるほどの暴力や「あの家畜」というような形態差別用語が当たり前のように飛び交う収容所

少年は死にそうになりながらも仕事をしますが、命の代償が仕事という現場は想像以上に過酷。

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また、食料の配給では形態間で量が決められていて、監守と同じケンタロス族は優遇される。ここまで直球な差別行為をセントールの悩みで初めて観ました。

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形態差別や偏見など差別の連鎖が続いていき、収容所では秩序が崩壊される様子が非常に恐ろしいです。

殺し合いのような喧嘩も後を絶ちませんし、少年が止めようとしても止められる訳がなく茫然とするだけ…。

そんな時、状況に似合わず達観したような竜人の男性が「形態の差が無ければ争いは無くなるなんて嘘」「一緒の見た目でも、今度は着る服の違いで争いが起きる」と発言します。残酷ですが本当にその通りだと思いますし、そう思えることが悲しいですね。

 

残酷で無秩序のように見えた収容所でも、他者に対する優しさや強い信念のようなものを感じることがありました。人目をはばかって死にそうになっていた少年に食料を与えたケンタウロス属の男性。

 

 

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この男性は死刑囚のようで「お前は良いやつだから」「良いやつが生きなければいけない」という発言からも、過酷な収容所の中で大切な何かに気づいたから少年を助けたと思うし、同時に死を覚悟していたと思うのです。

※このケンタウロス属の男性は死刑囚ではなくて、強制収容所のゾンダーコマンドのような存在だそうですね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BE%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%B3%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%89_(%E5%BC%B7%E5%88%B6%E5%8F%8E%E5%AE%B9%E6%89%80)wiki

ゾンダーコマンドは、第二次世界大戦ナチスドイツがユダヤ人を中心に構成した特殊部隊。虐殺された同じユダヤ人たちの死体処理を行っていたと言われていて、彼らゾンダーコマンドのユダヤ人たちも強制的に仕事をさせられていました。また彼らも大量虐殺の目撃者として、後に多くのゾンダーコマンドたちが殺されました。収容所ではユダヤ人でも役職が違ったり、特別な待遇を受けていた方も存在したと聞いたことがありますが、

親しい人の死体処理をする場合もあって、この仕事を辞めるには自殺するしかなかった…悲惨すぎる 

だからケンタウロス属の男性はこのままではいずれ死ぬこと、解放されても裏切り者とし殺される立場なのです。翼人の少年に対して言ったセリフも、彼の状況を考えると理解できますね。

※青果市様ご指摘ありがとうございます<(_ _)>

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後に解放軍が来て少年は助けられますが、形態による差別や悲惨な光景を多く目にしてきた少年は、絶対に分かり合えないと思えた残酷な世界で一握りの優しさを感じるのです。

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優しさと気軽に言って良いのか分かりませんが、他者を思いやる気持ちや人種・形態関係なく接してくれる存在など、過酷な状況でもたしかにそんな人物が存在したこと

形態や考え方が違っても優しくしようとしたり、痛みを理解して一緒に悲しむ姿、複雑な宗教や差別さえも超越する要素を垣間見れてグッときました。

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そしてシーンは翼人の会長に移ります。

会長が両棲類人のジャン・ルソー氏の握手に対して苦言を表した理由。

部下に対しての「君はもっと学ばなくてはならない」という言葉。

何故会長がそう発言したのかが分かりますし、9話全体を視聴してから会長のセリフを聴くと重みが違います。9話を通じて「セントールの悩み」が描きたいものが何か、少しは理解できた気がします。

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そういえば、Aパートの冒頭で羌子が「どんな人種であれ賢いやつは賢く、バカはバカ」というセリフも9話を象徴する言葉ではないでしょうか。

乱暴な言葉に聞こえますが、種族で違いはあれど分かり合えることはあるし、均衡を保ちながら共生することだってできるはず

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9話は姫乃ちゃんなどのメインキャラは冒頭にしか登場しませんし、物語全体が戦争や人種差別といった過酷なシーンが続きます。

正直、姫乃ちゃんたちの楽しい日常生活を観たい方、「萌え作品にこんなシーンはいらないんだよ」と考える方もいるはずです。ですからセントールの悩みの中で最も評価されないのが9話だと思うのです。

 

けど私は9話を高く評価したい!この話は絶対にセントールの悩みにおいて必要ではないでしょうか。

平和に生活する姫乃ちゃんたち。その過去に翼人の会長が経験したような形態・人種差別、悲惨な戦争がたしかにあった事実。過酷な中でも差別を超越するような思いや優しさが確実に存在したこと。

様々な種族が暮らす世界でどうすれば多種属と共生できるのか。答えは難しいけれど大切なヒントが9話に隠されている気がしてなりません。

 

あと、EDテーマにもある変化がありましたね

セントールの悩みに合ってないと感じていたEDテーマの「Edelweiss」

9話の余韻にピッタリとハマっていたので考えを改めました。9話のような言葉で言い表すことが難しい要素を歌っているような素晴らしい曲だと思いました。

 

恐らく賛否が発生する話ですが、私は9話を観てますます「セントールの悩み」が好きになりました!