キリンリキのしっぽのアレが考える

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ふたつのスピカ

 

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【作者】 柳沼行

【連載誌】月刊コミックフラッパー ※2009年連載終了

【巻数】 全16巻

【関連キーワード】

宇宙 宇宙飛行士 努力 幽霊 ノスタルジー 友達 

 

【あらすじ】

2010年、日本初の有人宇宙探査ロケット「獅子号」が打ち上げられるも補助ブースターの爆発によって唯ヶ浜の中心地へ墜落する。搭乗員は全員死亡、民間人にも多大な被害を及ぼす大惨事となった。

獅子号墜落事故で母親を亡くした鴨川アスミだったが、ある日ハーモニカを吹くライオンの被り物をした幽霊と出会う。「ライオン」と名乗る不思議な幽霊は、獅子号の搭乗員で史上最年少宇宙飛行士の幽霊だったのだ。

 

ライオンさんと話す中で、鴨川アスミは次第に宇宙に憧れを抱くようになる。それから数年後、宇宙飛行士になることを目指して、中学卒業後に新設されたばかりの「東京宇宙学校」に入学するのだった。

掛け替えのない友人たちとの出会いや、厳しい訓練にも弱音を吐かず努力を続けるアスミ。果たしてアスミは宇宙飛行士として宇宙に行くことができるのか。

 

 

【感想】

 物語の分かりやすいテーマとして、小柄な少女である鴨川アスミが宇宙飛行士を目指すことが挙げられますが、「ふたつのスピカ」では懐かしさや、他作品とは何かが違うヒューマンドラマが存在していると思うのです。

 

登場人物たちの過去の回想シーンが多いことが特徴ですが、各人物がそれぞれ葛藤を抱えて生きていること、困難に立ち向かおうとする姿勢がアスミを中心に描かれている。

 

また、アスミが自分を顧みず他者を助けようとする行為が綺麗事に映らないことも凄い。あれだけ宇宙飛行士になりたくて努力をするアスミが、例えその行為によって宇宙飛行士の夢が絶たれてしまう状況であっても、大切な友達を助けることを選ぶ姿に心を打たれました。

 

彼女は小さな頃から宇宙飛行士であったライオンさんの指導を受けます。毎日のようにランニングをして宇宙に行くためのトレーニングをずっとしてきました。

 

母親を失ってロケットの技師だった父親の負担も増え、決して裕福ではない家庭状況から、アスミは宇宙学校に入学するか悩みます。しかし、父親が必死に働いて貯めた入学金や、娘を思う姿が古き良き映画作品のようで懐かしさを感じますね。

 

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※幽霊のライオンさんと主人公の鴨川アスミ

 

アスミは小さな頃からトレーニングを欠かさないため、宇宙学校の誰よりも足が速くて持久力も卓越したものを持っています。学力も英語以外が満点という、一見天才のように見える主人公ですが、彼女は簡単なようで難しい努力を毎日続けているのです。

 

宇宙学校ではエリート街道とはほど遠いボロボロの(かもめ寮)住まい。学校がある日はキツイ訓練が終わった後にレストランでアルバイト、そこから寮に戻って深夜まで勉強するという…。漫画という架空の物語でも、特別な才能だけで困難を乗り越えたり、人物の才能しか見せようとしないなど…、そのような作風じゃないことも素晴らしい。

 

心から宇宙が好きだと伝わってくるのも良い。東京の寮で暮らしていますが、嬉しそうに星について語るアスミを寮の先輩が見て「嬉しそうなアスミちゃんを見て、何だかこっちまで嬉しくなっちゃった」というセリフが好きです。

 

周囲の人物たちに対するアスミの優しさは、私たちが生きる世の中はもちろん、二次創作でも感じる機会は少ない。コンプレックスによって生き方に悩む友達との接し方からも、絶滅寸前の優しさを持つ人物であると言えるでしょう。

 

他作品で例えるなら、ひだまりスケッチに登場するゆのっちに近い心根を持つキャラクターだと思います。

 

死によって感動を誘う展開は賛否が分かれますし、一巻と最終巻で絵柄が変化しているので初見では驚くかもですが、主人公アスミの頑張りや、柳沼先生にしか描けないであろう優しいノスタルジーは素晴らしい。

 

著者の柳沼行先生は、ふたつのスピカをほとんど一人で描いたそうです。

時には友人や連載誌であるコミックフラッパーのお偉いさんらが制作を手伝うという信じられない秘話もあって面白い。

それだけ好かれていた作品でもあり、著者の体験を綴った「もうひとつのスピカ」というオマケページも素朴でちょっぴり恥ずかしいけれど良い味を出しています。 

 

漫画以外では2003年に望月智充監督によってアニメ化されました。ビデオ(VHS)とDVD、DVDボックスが発売されましたが、現在は全て廃盤です。

 

私はずっと第4巻を探していますが入手できていませんorz

(いつかアニメの方もレビューしたいですね)

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ふたつのスピカは「読んだ人が必ず感動する」と評価された作品ですが、もちろん個人差はありますし、全く感動しない方もいるはずですよね。

 

ただ、アスミの努力や優しさについて感動したことは嘘ではないし、誰もが経験するであろう悩みや生きづらさに対して、アスミの純粋さや努力している姿が特効薬のような働きをするのではと考えています。何度読み返しても、アスミの考えや物事の捉え方が心に残るのです

 

メディア展開は終了している作品ですが、もっともっと評価されるべき作品ではないでしょうか