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サイン (2002) 

 

今回は大好きな映画監督である「M・ナイト・シャマラン」監督作品で、2002年に公開された映画「サイン」とシャマラン監督について

ネタバレあり

 

【シャマラン監督と世間の酷評】

f:id:kiitosgirafarig:20171011141922j:plain©Buena Vista Home Entertainment,lnc

シックスセンスアンブレイカブルで主演を務めたブルース・ウィリスとシャマラン監督

 

M・ナイト・シャマラン」監督は、インド系アメリカ人の映画監督で、シャマラン監督を知らない方でも「あの、どんでん返しで有名なシックスセンスの監督だよ」と言えば、多くの方が「あの監督か!」となるでしょう。

 

シックスセンスが処女作と思われがちですが、1998年に、おじいちゃんっこの少年を主役にした「翼のない天使」を撮っていますし、それ以前にも自主制作映画を何本も制作しています。監督自身がカメオ出演することも、ヒッチコックや自主映画の影響を感じますね。

 

シックスセンスの成功から、シャマラン監督には「どんでん返し」というイメージが付きました。シックスセンス以降の映画は評価に恵まれず、インターネットの評論や、映画評論家の方のレビューを見るに酷評ばかりが目立ちます。

特に今回ご紹介する「サイン」は米国でヒットしましたが、世間の評価は大変低い映画です。

「何?このオチ…」「映画料金を返してくれ!」「そこら辺に生えている雑草を見てたほうがマシ」といった具合に、散々たる酷評がされてきました。

 

しかし、ちょっとまってほしい。シャマラン監督はどうしても大どんでん返しや、表面的な大きなテーマばかり注目されてしまう監督です。ですが、少し視点を変えると違った見方が姿を現し、作品が持つ内面的なテーマが浮き彫りになってくる作風なのです。

 

 

例えば、シックスセンスは幽霊が見えることで苦しむ少年と、最愛の恋人との関係が崩壊寸前に見えるカウンセラー2人が中心の物語です。よく映画を観れば例のだいどんでん返し以外にも「崩壊寸前であった家族の絆や関係性が修復される」という気づきにくいテーマが存在します

 

 

そのようにシャマラン監督作品は、大きなテーマとそのテーマによって絶望から希望に変化したり、登場人物たちの悩みや他者との関係性が修復していく様が感動します。

たしかに、シャマラン監督の作品は突っ込み所が多いし、物語も「これで終わり?」と感じてしまう展開も少なくありません。特に2006年に制作された「レディ・イン・ザ・ウォーター」以降、シャマラン映画の特徴だと感じていた希望や再生が描かれなくなったと個人的に感じています

酷評がとても多いですが、限りなく大きなテーマを狭い範囲内で、ストーリーと人物たちを丁寧に映し出した作風はもっと評価されて良いと思います。

また、会話だけでなくカメラワークによって人物の感情を表現したり、音楽の使い方も優れた監督ではないでしょうか。

そのことを踏まえて、サインのレビューを読んでいただけたら幸いです。

 

signs(2002)

 

 

【監督】M・ナイト・シャマラン

【公開年】2002年 米国

【ジャンル】SF ヒューマンドラマ 

【関連キーワード】

家族 宇宙人 侵略 ミステリーサークル 一軒家

 

【あらすじ】

最愛の妻の死で牧師を辞めたグラハムは、弟のメリルと2人の子供と農場を営んでいた。ある日、トウモロコシ畑に不思議なミステリーサークルが出現し、ミステリーサークルは世界中に出現します。

いつの日か、世界中の空にはUFOのような光で埋め尽くされていく。世界が宇宙人による侵略を恐れるようになりグラハムたち家族も危機感を覚えていきます。

バラバラで偶然のようにみえた出来事がやがて一つに繋がっていき、一つの家族に恐怖が迫っていく

 

 

 【サインのオマージュ】

サインがどのような映画なのかを説明する場合、監督インタビューなどから参考に、オマージュ元と取れる4つの映画が存在します。

 

鳥(1963)

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※サスペンスの神様と言われたアルフレッド・ヒッチコック監督作品

1963年に制作された動物パニック映画の元祖と評価される映画。BGM無し・理由なく人間を襲う鳥の姿が非常に恐ろし作品で、一軒家に閉じこもり鳥の襲撃から逃れるシーンが、サインのプロセスと似ています。

 

 

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)

 

ゾンビ映画のパイオニアジョージ・ロメロ」監督作品

大量発生したゾンビから民家に逃げ込んだ人間たちの物語。この作品も一つの民家が舞台で、外の状況を探ろうとラジオ放送に耳を傾けるシーンがサインにも存在します。

 

 

ボディ・スナッチャー 恐怖の街(1956)

人間の睡眠時に、未知の生命体によって体を乗っ取られてしまう侵略物。

サインとはドンパチものではない侵略ものとして、限りなく狭い範囲を舞台にしていることも共通します。

 

エクソシスト(1973)

サインに登場する元牧師グラハムは、最愛の妻を亡くしたことがキッカケで信仰を失います。エクソシストでも、信仰を失ってしまったカラス神父が登場しますし、一つの家の一つの部屋で悪魔祓いが行われる設定は、シャマラン監督が強く影響されたと思います。

 

 

 

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ある日、農場にミステリーサークルが出現。最初は近所に住む人間のいたずらを疑うが、トウモロコシの茎は非常に硬く、一日では到底ミステリーサークルを作ることは難しい。

いつもと違った行動をする動物たちの姿や、しっくり来ない感覚を引きづりながら、グラハムたち家族が生活をしています

 

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しかし、不思議な兆候は続いていきます。窓からは黒い人のような影が見えたり、トウモロコシ畑では人間に見えない足もグラハムが確認しています。

 

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最愛の妻を亡くしてから信仰を失ったグラハムは、牧師を辞めて家族と農場を営んでいます。

弟のメリルはホームランの飛距離で多くの記録を持つ元マイナーリーガーです。しかし、「振らなくてはいけない」と思うことから三振が多く、野球をやめて現在は兄の手伝い中。

生まれた時から不思議な感覚を持つ少女ボーは、水に対して人一倍こだわりがあります。

ぜんそく持ちの少年モーガンは、父親であるグラハムを信頼しておらず軽蔑しているようです。

 

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グラハムが何度注意しても水の入ったコップを置くことを辞めないボー

 

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世界中の上空で無数に光る物体や、宇宙人に関するテレビ番組示をかじるように視聴するグラハム一家

 

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妻が亡くなってから、家族の関係性は決して良いものではありません。

信仰を失ってから気力を感じないグラハムや、その姿を良く思っていないメリルとモーガン。今にも崩れそうな絆や関係性が、宇宙人の侵略という出来事によって変化してきます。

 

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※エイリアンたちが家に侵入しようとする時、ふっと何かを思い、子供たちが生まれた時のことを話すグラハム

 

この作品の大きな特徴として、宇宙人が侵略しに地球にくる・人間を狩りに来る物語ですが、エイリアンは少ししか登場しませんし、部屋と部屋を挟んで対峙することが多い。

あくまで、一つの家・一つの家族に焦点を当てた非常に小規模なストーリーなのです。

だから、かっこいい兵器は一切登場しないし、救世主のようなヒーローも存在しません。描かれるのは、4人の家族が体験する恐怖と、不思議な現象が必然にように繋がって彼らを助けてくれるシーンです。

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グラハムと妻の回想シーン。

交通事故によって身体が切断された妻は、意識があることが奇跡という状況でグラハムと最後の会話をします。この会話では、妻が目の前にまるでグラハムがいないように・誰かに託すように話すシーンもあって、妻の死も必然だったととれるでしょう。

 

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※確かにエイリアンの造形は陳腐ですし、撃退方法も矛盾点が多い

 

誰かがそっと助けてくれたような感覚は不思議ですし、絶望的な状況からも、それぞれの行動や癖・発言の意味が分かっていくシャマラン節は、私の性に合っているようです。

 

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SFとして観れば物足りない作品だと思います。

ただし、崩壊寸前の家族が救われる・再生する物語として観れば違った感想を抱くはず。

教会に駆け込む人々をテレビ越しで観るグラハムの表情ひとつをとっても、素晴らしい映画だとわたしは考えています

 

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※信仰を取り戻したグラハム。子供たちの笑い声が聞こえるラストシーンが印象的。

 

不気味さを持ちつつ希望が見え隠れするジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽も好きです。

 何度も述べているように、シャマラン監督はどんでん返しばかり注目される監督です。でも、もっと内面的な要素・物語の設定が丁寧に描かれています。

そのような要素は、

シックスセンス(1999)

アンブレイカブル(2000)

サイン(2002)

ヴィレッジ(2004)

レディ・イン・ザ・ウォーター(2006)

までの作品で感じることができました。

配給会社の変更・監督自身の問題もあるでしょうが、マニアックな設定やどんでん返し以外も魅力的な作品をまた撮ってほしいです。