キリンリキのしっぽのアレが考える

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ようこそ! キリンリキのしっぽには小さな脳がありますが、そんな不思議なしっぽが一生懸命に何かを考えている…そのような眼差しで見て頂ければ幸いです

好き もよい

好き もよい (CR COMICS DX)

【タイトル】好き もよい

【作者】  双見酔 http://ts.sh49.net/index.html

 

【関連ワード】

オムニバス 短編 同人誌 気恥ずかしい ほんわか

 

【収録】

『同人誌をつくってみた。』 

『ふたつねがい。』

『好きといえないこと』

『ちくたく』 

『好き もよい』※描き下ろし

 

 

【感想】

「好き もよい」は、無職の主人公・働くことをテーマにした4コマ漫画「空の下屋根の中」や、アニメ化もされた「魔法少女なんてもういいですから。」の双見酔先生による作品。

先生が過去に描いた同人誌から4本、描き下ろし『好き もよい』1本の計5話が収録され、青少年たちの様々な「好き」を映し出したオムニバス形式の作品となります。

 

同人誌の制作に悩む学生や、両想いだけど「好き」という言葉が中々言えない恋人。好きになる存在や動機、方法はいろいろあり、優しいタッチによって、悩みを抱え込んでしまっても前に進んでいく登場人物たちが描かれています。

5つの短編からなる物語は、好意を抱く以前の微妙な人間関係も描かれており、繊細な心の変化を感じることができるでしょう。

 

 

『同人誌をつくってみた。』では、友人が制作した同人誌がキッカケで自身も同人誌を制作してイベントに参加・販売する物語。

同人制作の厳しさを母親から教育されたり、即売会でのルールやマナーに戸惑いながらも同人制作に魅力を感じていく主人公が描かれています。

主人公の母親は破天荒で、絵の練習を怠って「時間が無い」と嘆く娘に対し「授業中にやりなさい」と発破をかける様子、キッカケをくれた友人が絵を描くことに悩む姿からもコピー本ひとつ、制作する大変さが伝わってきますね。

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 ※引用 ジャイブ株式会社「好き もよい」 双見酔 初版 P10  

学校の友人と主人公からガールズラブの雰囲気を感じますが、同人誌を通じて何かを学ぶことや葛藤するシーンが強く印象に残っています。

何かを創作することは大変ですし、実際に同人制作を行っていた著者が描いているので、実体験?と感じるほど苦悩が伝わってくる

 

 

直接「好き」である好意を全面に出す『好きといえないこと』や、偶然知り合った男性を好きになり、心の中で相手の好意を願う『ふたつねがい。』。

作品全体に目を向けると、何かを・誰かを好きになるキッカケや方法はそれぞれで違います。中には『ちくたく』のように、好きでも嫌いでもない微妙な関係性から付き合い始めたカップルの物語も存在しますし、直接的や間接的な描写問わず、登場人物たちの多くが両想いなことも特徴ですね。

 

印象的なシーンは『ふたつねがい。』で、お互いが相手に好意を持ってほしいと願うコマが非常に素敵だなと思いました。直球な恋愛模様に読者が気恥ずかしいと感じるかもしれませんが、双見先生特有の淡い雰囲気により大分緩和されています。 

 

 

唯一の描き下ろしタイトル『好き もよい』の主人公はオンラインゲームをプレイする社会人の女性で、ゲーム内で口数が少ない「アキ」というプレイヤーが気になり始めます。

オンラインゲームの複雑なコミュニケーションを上手く表現されており、匿名により相手がどのような人間か分からない状況からも、アキのプレイスタイルやチャットの会話から主人公が人柄を想像すると同時に、考えやプレイスタイルに変化が現れるシーンが大変リアルです。

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※引用 好き もよい 初版 P132 

後に少しずつアキと会話できるようになった主人公は実際にアキと会うことになり、ゲームでしか知らない人物を「好き」になる過程も描かれています。

ブログ主もオンラインゲームをプレイしますが、基本的にロム専で絶対にオフ会には参加できないタイプ。他プレイヤーとのチャットは怖いし、好きもよいで描かれた恋愛模様には少し懐疑的です。匿名の相手に会う行為自体が危険ですしね。

 

ですが私も「ちょっと気になる…」というプレイヤーが存在するし、ネトゲ以外にも様々な某体でオフ会が開催されている事実。ネットお見合いなどもあるらしく、驚いてしまう。

主人公が、ネットコミュニケーションにあたふたする様子が分かりすぎて胃がキリキリ

してしまったorz

 

 

【雰囲気を読ませる作風】 

双見先生の作品は優しい雰囲気があって、登場人物たちの何気ない仕草や会話に独特の空気感が存在します。主人公がフッと笑うだけのコマにもセリフでは表現できない心境や心情を感じることができますし、何を考えているのか想像するのも楽しい。

「好き もよい」は、元が商業用ではない同人作品を中心に構成される作品なので、人によって敬遠する方もいるでしょう。執筆者は「空の下屋根の中」がキッカケで本作に触れましたが、商業作品と雰囲気が重なる部分があってすんなりと読むことができました。素朴ながらも可愛らしいデザインは素晴らしく、不思議な魅力が存在する作品ではないでしょうか。