キリンリキのしっぽのアレが考える

キートンの探偵学入門 (1924)

 

【タイトル】キートンの探偵学入門

【監督・主演】バスター・キートン

 

【関連ワード】

無表情 スタント 不死身 サイレント 喜劇王 バスター・キートン

 

 ※ネタバレ注意

 

【感想】

素晴らしい作品は時代を超えて評価され、その分野に興味がない方をも惹きつける魅力があります。サイレント映画は観る人を選びますし、現在では過去の技術として滅多なことでは注目されません。キートンの探偵学入門も約100年前の作品なので、私をふくめ現代に生きる人間は観る機会に恵まれない、当時のコメディや映像表現が古いと評価されてしまうオチがあるわけですね。

 

名作と呼ばれる古い映画は過剰に評価されてしまうことがあり、そんな作品を「つまらない」と言うものなら「あんたは分かってないな…」や「にわか映画好きかな」と散々たる罵倒がされてしまう。う~ん…。だから映画って衰退したのかもしれないし、好んで見ようとする人が減ってしまう。百人いたら百人だけの感想があるはずだと思うんだけどな~

それだけ往年の映画を視聴する際は感想を述べる時にすこぶる気をつかうわけです。

 

しかし、チャップリンハロルド・ロイドと並び「世界の三大喜劇王」と呼ばれたバスター・キートンの作品は、そのような「過去の名作の難しい評論」、「観る人間を厳選してしまう」といった小難しい要素が非常に少なく、今でも老若男女、誰でもクスっと笑顔になれて感動できるエンターテイメント映画に仕上がっていると思うのですよ。

 

キートンの探偵学入門は映画技師を主人公としたサイレント映画ですが、キートンの体当たりなスタントが本当に笑えて元気になれます。列車が走る横を果敢に通り抜けたり、屋根からまっさかさまに落下したりと、思わず「危ない!」と視聴者が叫んでしまうほどのスタントです。

挙句には貯水タンクの水を勢いよく全身に浴びて首の骨を折ってしまい、それに気づかずそのまま撮影を続けるといったエピソードもあります。だけど不死身のキートンだからこそ生まれるユーモアは素晴らしい。

 

そして彼はとにかく無表情でどんなに「うわ…痛そう…」と感じる無茶な演出も最後まで無表情で演じ切るw だからSFXもない時代ながらも誰もマネできない凄い映像が撮れたのでしょう。現在視聴しても「どうやって撮影したんだろう?」と驚いてしまう映像がある。

 危険なスタントは命が掛かっているので殺伐な雰囲気になるものですが、キートンの無茶苦茶なスタントからは殺伐な雰囲気は一切感じないから凄い。だから観るものを厳選せずに映画に集中することができるんですね。

 

ちょっとしたイタズラチックな仕掛けもピタゴラスイッチを観ているようで楽しい。小道具の使い方も斬新でトリッキーな仕掛けは手品を観ているようでした。

 

探偵学入門で活動写真のスクリーンに入り込む演出があります。上手くカットを駆使して見事に映し出すことに成功していますし、キートンが命を省みずライオンに近づく、海辺の岩壁に一人佇んで波をもろに受けるといった「夢」のような表現もお見事。また映画技師のキートン幽体離脱をするシーンなんかは、あの当時、どうやって撮影したか気になります。

 

映画ラスト、危険なスタントや攫われた彼女を救うために奮闘したのが全て夢だった「夢オチ」ですが、それだけで物語が終わらなかったのが良かった。

映画技師が彼女とどう接して良いか分からず、上映されていた映画のラブシーンをカンペにしてぎこちないキスをするシーンなんかは笑えるはずがウルっと来てしまいましたよ。

 

映画が人を魅了しつづける要素がバスター・キートンの作品には詰まっていて、テンポも良いしサクッと観れる作品も多く、どんなに時代が進んでも支持される理由が分かりました。

 

時代を超越して観る人がハッピーになれる。

そんなステキな作品を撮り続けた人こそがバスター・キートンなのだ!