キリンリキのしっぽのアレが考える

過去のない男 (2002)

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引用 ⒸSPUTNIK OY 2002

左 過去のない男  右 イルマ

【タイトル】過去のない男

【監督】アキ・カウリスマキ

 

【関連ワード】

記憶喪失 不景気 フィンランド 温かい 人生は後ろ向きには進まない

 

 

【あらすじ】

フィンランドの首都ヘルシンキに訪れた男性が公園で休んでいたところ、3人組の暴漢に襲われ記憶喪失になってしまう。

港付近のコンテナに住む家族に助けられ、瀕死状態から何とか回復した名無しの男性は、職を探すも名前が無いことにより職安でも門前払いされてしまう。

 

浮浪者や失業者などの支援や食事の配給を行う「救世軍」に務める女性「イルマ」 との出会い。救世軍の落ちぶれた音楽隊の再生。記憶喪失の男性を助けてくれる人々。過去のない男はそんな人々の協力のもと、人間らしい生活を取り戻していく。

 

 

【感想】

列車でヘルシンキに来た男性が暴漢に襲われ記憶喪失になってしまう。

見知らぬ土地と人に囲まれ職にも就けず途方にくれる男性を、コンテナに住む家族がみかえりを求めず助けてくれたり、小さな食堂でマッチ箱に入れた使い古しのティーパックでお茶を飲んでいると、食堂のおばちゃんがスッとご飯を出してくれたり…。

 

とにかく記憶喪失で浮浪者の男性が、そんな思いやりと温かな人々との交流によって人として最低限の生活力を取り戻していきます。

 

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引用 ⒸSPUTNIK OY 2002

「どうせ残りものだから」とご飯を出してくれたおばちゃん

 

救世軍に勤務する女性「イルマ」と過去のない男恋愛模様も素敵。

決して美男美女というわけではありませんし、デートは森でのキノコ取りや男性の自宅であるコンテナの中で食事、修理したジュークボックスで音楽を聴いたりと、どれも素朴で無表情ながら2人は大変幸せそうに感じます。

 

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 引用 ⒸSPUTNIK OY 2002

 記憶喪失の男性も、イルマとの出会いで生きる喜びや小さな幸せの連続を感じ始める。

 

救世軍の音楽隊を「もっと若者に受けるような曲を演奏したらどうか」と提案したことで、人がまばらだったコンサートも満員になります。

 

また、フィンランドの不景気によって理不尽に銀行口座を凍結され、従業員に給料を払えず銀行強盗をした元土木会社社長。それに何故か巻き込まれて犯人扱いになってしまった過去のない男

社長の最後の頼みで元従業員のもとへ給料を届ける主人公ですが、みんながムスッと無表情で給料を渡されて静かに頷くだけ。それでも「ありがとう」と感謝の気持ちが画面から伝わってくるのがカウリスマキ監督の凄いところです。

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引用 ⒸSPUTNIK OY 2002

イスに腰かけているのが、銀行強盗をした社長。巻き込まれたけれど、快く頼みを快諾する主人公

彼も給料未払いの従業員に対して申し訳ない気持ちでいっぱい。どこか憎めないキャラでしたね

 

 主人公を最初に助けてくれたコンテナに住む家族。その家族の主人が

「人生は後ろ向きには進まない」と発言しますが、本作の大きなテーマにもなっていると思います。

 

登場するキャラクターたちのほとんどが貧乏で、社会的に弱い立場の人間であることは間違いありません。

ですが、カウリスマキ作品に感じる「心まで貧乏ではない」が淡々とユーモアを織り交ぜながら映しだされる様子はやっぱり素敵なのですね。

 

また、「自然な気遣い」も面白い

コンテナに電線を引いてくれたお兄さんに主人公が「何か礼をしたい」というと、「俺が死んだら情けを」とオシャレな言い回し

強欲な警備員のコンテナ入居料にお金が足りず、主人公が「金は払う。死と同じで確かだ」といったセリフなど、なんとも品のあるユーモアが好きです。

 

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引用 ⒸSPUTNIK OY 2002

 

不景気による浮浪者や暴漢に襲われて記憶喪失など、酷な物語に聞こえる本作。

しかし、人々の温かな関係とイルマと主人公のラブロマンスは、観る人をハッピーな気持ちにしてくれるでしょう。

 

素敵な名作だと思います!