キリンリキのしっぽのアレが考える

未知への飛行 (1964) フェイル・セイフ

 f:id:kiitosgirafarig:20180304163034j:plainSony Pictures Entertainment (Japan) Inc.

名優ヘンリー・フォンダ演じるアメリカ大統領

 

【タイトル】未知への飛行 フェイル・セイフ

【監督】シドニー・ルメット

 

【関連ワード】

水爆 ソ連と米国 会話劇 密室 恐ろしい プロフェッショナル 

 

 

【あらすじ】

技術や経済、国どうしの攻防が続くソ・米冷戦時代。

20メガトンの水爆を乗せたアメリカ空軍の爆撃機が、機械の誤作動によりモスクワに向かう。米国側は考えうる原因を追及し、早急にモスクワに向かう部隊を引き返えそうとするが、いかなる命令も無視し、帰還不可能な区画「フェイルセイフ」ポイント(進行制限地点)を超えてしまう。アメリカ側はなんとか自軍の爆撃機を攻撃するが、そのうちのグレイディ大佐率いる爆撃機が着々とモスクワ上空へ向かう。

 

原因が分からず事の重大さにより冷戦中のソ連と意見交換をして協力体制をとるが、敵対国という葛藤が両国で浮き彫りになり作戦は困難を極めるものとなる。

 

刻々と水爆を搭載した爆撃機が向かう中、戦争を避けるため、そしてソ連に誤りであることを証明するため、アメリカ大統領は重大な決断をする。

 

 

【感想】

シドニールメット監督と言えば「十二人の怒れる男」など、狭い密室での緊張感のある会話劇、演出を含めて大変リアルな映画を撮る監督ではないでしょうか。

未知への飛行も、指令室・中枢室・爆撃機内・大統領と通訳の個室といった密室での会話劇が中心に物語が成り立っています。

 

だから本作の特徴は、血しぶきや戦争シーンが一つも存在せず、名優たちによる緊迫した会話劇と室内における話し合いがメインの映画となります。

 

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Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc.

中枢室 敵・味方含め、爆撃機の様子を映す機械

 

 会話劇ながら視聴者である私も思わず冷や汗をかいてしまう。そんな緊張感と迫力ある会話劇は見事としか言いようがありません。

機械の誤作動によって引き起る最悪の状況の中で、それぞれのキャラも立っていますし。

ウォルター・マッソー演じるグロティシェル教授のように、緊急事態によってソ連に攻撃するチャンスが生まれたと…。そして共産主義を壊滅させるのは今しかないと発言するシーンは狂人にも映ります。

しかし、原爆が唯一落とされた日本を例えに使い説得力が生まれていました。

もし水爆が落とされれば生き残るのは地下深くの重罪を犯した囚人と紙に守られた文書係である。そして囚人の暴力と文書係の組織力で争いになる話も背筋がゾッとする。

 

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Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc.

左 後に大統領命令で重大な任務を受けるブラック将軍

右 狂人に映るが話す内容があながち間違いではないグロティシェル教授

 ブラック将軍

「今の兵器は人間の制御力をはるかに超えている」というセリフは現代にも言えること。未知への飛行はあり得ないであろう設定が存在せず、実際に起きる可能性があるケースばかりで尚更恐ろしいと感じてしまいます。

 

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Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc.

水爆を積む爆撃機内 グレイディ大佐

 一つひとつのシーンをとっても、ブラックジョークやふざけたシーンが一切ありません。

役者の表情を見渡しても、額から汗がしたたる様子がみられて真剣。

会話劇の中では爆撃機の行方を固唾を飲んで見守る場面があるのですが、一気に静寂するので画面にくぎ付けとなり実際の現場にいるような感覚になる。だからますます人物たちに感情移入してしまうのです。

 

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Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc.

緊迫しているのはソ連側も同じ。ソ連元帥が倒れて変わりに指揮を執るコニエフ将軍。彼らも同じ人間であり大切な家族がいて平和を願う心も持っている。

 ソ連とホットラインで電話を繋ぎ情報共有する中で、それを快く思わない関係者もいます。米軍のカシオ大佐が上司を殴ってでも命令を変えて連行されますが、そんな彼を「立派な軍人です」と言い放つ将軍の言葉が忘れられません。

 

全員が被害者と言って良いし皆が悪いとも捉えられる。

機械や水爆のように簡単に人間をあやめられる存在、そのような存在に頼る人間の自業自得やエゴも映し出されている気がします。

 

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Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc.

アメリカ大統領と新人の通訳

 

ソ連との会話を円滑にするため、若い通訳を介してアメリカ大統領と会話をしますが、通訳の仕事の大変さが分かりました。

ただ言葉を訳すだけではなく、本当の感情を知るために言葉よりも声に真意があることを見抜かなくてはならない。本当に重い言葉だ。

 

 

アメリカ大統領の最後の決断は非常に恐ろしいながらも、もうそれしか方法がないと理解できる。

もし私たちリアル世界でも未知への飛行のような事態が起こったら…。想像するだけで頭が痛くなりますし、絶対に起こらないという確証も持てません。

 

この作品は演出や設定、脚本から役者など、すべてにおいてプロフェッショナルな映画だと思います。

それほど素晴らしい作品で、私は視聴するたびに冷や汗をかき背筋が凍るような感覚になりますね。

 

傑作であり名作中の名作だと思います!

 

 

 

引用 SonyPicsHomeEntJapan  youtube