キリンリキのしっぽのアレが考える

きのこ人間の結婚

f:id:kiitosgirafarig:20180608111639j:plain

【タイトル】 きのこ人間の結婚

【作者】 村山 慶

【連載誌】 WEBコミック「ぽこぽこ」 ※連載終了

Ohta Web Comic [太田出版のウェブ漫画]

 

 

【感想】

きのこ人間の結婚 世界観 

人馬・角人・翼人など、様々な形態種族が登場する「セントールの悩み」。

「きのこ人間の結婚」は、セントールの作者である「村山慶」先生による作品で、セントール同様に、私たちのような〝人間〟とは違う種族、生き物たちが描かれています。

 

その我々〝人間〟に近しいく描かれているのが、〝菌類〟に属する人間であり、〝きのこ人間〟に属されます。また、それらの人間たちは すべて女性です。

 

この世界はそこら辺にキノコらしき植物が生えており、菌類が統べる世界と言って過言ではありません。

 

きのこ人間たちは動く菌類の一種で、この世界の中で唯一の知的生命体。

ですから、食物連鎖の頂点であり、我々人間と似た見た目をしている。さらには体制を統治する女王 (王族) を中心に、階級のような身分も存在し、各種族間での縄張り争い、戦争もたまに起きます。

 

 

f:id:kiitosgirafarig:20180608141320j:plain

きのこ人間の結婚 村山慶 株式会社太田出版 第一刷 BookLive!版 P3

きのこ人間の結婚における独自の世界観は、設定が一から練られており、各種族の生活形態や、国家、体制なども詳しく盛り込まれています。

 

作品には大まかに

・植物グループ

・菌類 (人間や牛、きのこ類)

・動物

 

の生物グループが存在します。

 

 

このグループカテゴリの中で気になるのは、菌類に属される人間 (きのこ人間たち) と、操り茸に寄生され、きのこ人間たちと共存しなければ生きることが難しい、菌類に生かされている〝動物〟の存在です。

 

動物といっても、ネコや犬、馬や羊といった我々が想像する生物ではなく、八本足で巨大な蜘蛛のような生物や、四足で「ノソノソ」と呼ばれる馬みたいな動物たち。

彼らは菌類と違う生命サイクルがあり、個体数も少ない。そんな動物を操る「動物使い」もきのこ人間たちの中に存在します。

 

どんなお話? きのこ人間の生殖 (増殖)

本作を興味深く読ませて頂いた要素として、女性だけである きのこ人間たちの増殖が挙げられます。

基本的にきのこ人間は、増殖の際にほうしを放出せず、育児嚢 (いくじのう)で一定の大きさになるまで子供を育てるらしいです。

一人でも増殖は可能ですが、他のきのこ人間と「接合」することで子供を授かることも可能。この「接合」には体の相性が存在し、相性が悪ければ最悪腐って死に至ります。そして離縁の原因にもなるのです。

 

f:id:kiitosgirafarig:20180608111639j:plain

※左がエリエラ 右がアリアラ

 

本作は、牧人の新郎「アリアラ」と、書記の新婦「エリエラ」(表紙の2人)が結婚するシーンから始まるのですが、接合の際に相性が悪かったため、エリエラの体を一部だけ腐らせてしまう。

 

普通なら離婚をするのですが、アリアラはエリエラが体の相性関係なく好きで、離婚はしたくない! と抵抗する。

後にエリアラとの結婚を迫る王女の配偶者によって、強引にエリエラは連れ去られてしまい、アリアラは愛する新婦を助けに行く物語なのです。

 

簡単に言ってしまえば、さらわれた愛する人を王子様が助ける。そして逃避行をする物語。

なんともロマンチックな展開ですが、村山先生が描き出す独自の世界観によって、ファンタジーでありSF、寓話のような印象も受けました。

 

とにかく設定が丁寧に練られており、驚きました。

本作は一巻完結の作品です。しかし作品における丁寧な設定を含めた情報量が、1巻で終わらせるには勿体ない多さで驚かされます。

 

例えば、各体制の成り立ちであったり、作品世界の物流関係も詳しく書かれていました。

特に私は「紙幣」に関する記述に、女王の体制を整える技術の高さを感じました。

きのこ人間たちは物と物の交換 (物々交換) が主流で、一時期、紙幣を用いることが提案されました。ですが王女はこれに反対。紙幣があると欲望の歯止めが利かなくなるため反対したそうですが、妙に生なましくて作者の素晴らしいこだわりも伝わりました。

 

また、私たちのような人間が、作中では「神様」と呼ばれていることにも注目したいです。

作中にこんなセリフがあります。

「その点神様は男と女に分かれていて、男は父に女は母にしかなれなかったんだって」

「それに神様は女でも一人じゃ子供は作れなかったって」

「ややこしくって不便だね」

 

 きのこ人間の結婚 村山慶 株式会社太田出版 第一刷 BookLive!版 P25より引用

 神話のように伝えられた神様としての人間。

もしかしたら、遥か昔に私たちのような人間は絶滅しており、独自の進化を辿った結果が菌類   (きのこ人間) なのかなと、SFチックなことも考えてしまう。

 

素敵な作品でした!

1から練られたであろう丁寧な設定、それぞれの種族が独自の進化を辿り文化を形成している点。どの要素も高水準な作品で、やはり1巻で終わらせるのは勿体ないと思いました。

私たち人類にも共通する考え、そして寓話ともとれる物語に心が動かされましたし、キャラのちょっとした表情や仕草なんかも可愛い。

 

 人間以外のキャラクター目当てで読んでも良し。普通の世界観じゃ物足りない方が読んでも良し。ただし、女性同士の百合やイチャイチャは少しだけですから、それ目当ての方は注意。

 

素敵な作品でした!