キリンリキのしっぽのアレが考える

水域

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【タイトル】 水域

【作者】 漆原友紀

【連載誌】 月刊アフタヌーン ※上・下巻 連載終了

 

【感想】

中学生で水泳部に所属する千波が、現在はダムの底に存在する村に人が住んでいた時代にタイムスリップする。

タイムスリップと書きましたが、大掛かりな機械を使用する方法ではなくて、酷暑により気絶した瞬間であったり、睡眠時にフッと気づけば現代に戻るなど、夢のような感覚で過去で現代を行き来するんですね。

 

本作の大きなテーマは「水」と、主人公である千波の家族関係、家族の絆だと思います。

 

まず、本作は〝水〟を含めた美しい自然環境が描かれています。

 

美しい水郷や、石造りの橋から遊びで川へ飛び降りる子供たちなど。

一つひとつのシーンが夏休みに片田舎へ里帰りし、地域の子供たちが自然に中で元気いっぱいに遊んでいる。

そのような、どこか懐かしい雰囲気を感じさせる描写が多く、読んでいると、透き通るような綺麗な川にて、魚と並走して自由に泳いでいるような感覚になれる…。ぽつぽつと降る雨に涼むような、まさに自然に生かされて、人間にとって水がなくてはならない存在、有難味も感じました。

 

新装版 水域 上巻 (KCデラックス アフタヌーン)

※水域は通常版、↑のような新装版も発売されています。

 

雨が降らず酷暑が続く現代と、雨が降り続ける過去。

水域は主人公の千波の家族に焦点を当てつつ、ダムの湖底に沈んだ〝死んだ村〟と、そこに住む人間の強い思いも描かれている。

 

千波の母親、祖母・祖父。

ダム開発問題で自分の故郷がなくなる残酷さと言いますか…。

何故、千波が過去にダムに沈んだ村へ来ることができたのか、また、過去と現代で繋がる世代を超えた思い・絆など、限りなく狭い範囲で描かれた作品ではあるものの、実は壮大な世界観であり、不思議と強烈なノスタルジーも感じました。

 

この漆原先生が描くノスタルジー・懐かしさは本当に素晴らしい。

草木のにおいであったり、縁側でのんびり日向ぼっこをするような、ゆったりした雰囲気を体験できるような…。そんな素敵な作品でもあるでしょう。

 

水域は読む避暑地として、雨が降り続く梅雨の時期や、連日の酷暑でイヤになってしまう時にフッと読みたくなります。

人間が本能的に水を求めるような、言葉で表しづらい、素敵な感覚になれる作品ですね。