キリンリキのしっぽのアレが考える

キリンリキのしっぽのアレが考える

ようこそ! キリンリキのしっぽには小さな脳がありますが、そんな不思議なしっぽが一生懸命に何かを考えている…そのような眼差しで見て頂ければ幸いです

ネムルバカ

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【タイトル】 ネムルバカ

【作者】 石黒正数

【連載誌】 月刊COMICリュウ ※連載終了 完結

 

【感想】

大学の女子寮に住む先輩「鯨井ルカ」と後輩「入須柚実」が送る日常。

適当なようでグルグルと廻る青春模様、将来の夢に対する考えと、普通か変人か…、自分の生き方を模索する。

そして世の中のモヤモヤする仕組みや人間関係が、石黒先生ならではのユーモアによって描かれている…と思いました。

 

音楽で食べていくことを夢見るルカ先輩と、やりたいことが見つからず、したいことに突き進むルカを見て羨む後輩柚実。

社会の底辺に属する・属さない人間の話や、自分が普通だと思っていても、実は自分自身が普通ではなく他人から見たら変人に映るなど、グサッとくるシーンが結構に多かったですね…。

 

本作で特に有名なルカの造語「駄サイクル」は、インターネットを含めて自分の能力以上のものは得られず、身内だけで盛り上がって自己顕示欲を満たすだけ。身になるキツイ修行はしないから、小さな輪の中だけで需要と供給を成立してしまう…。

 

①見る→②褒める→③作る→④褒められる→①に戻る

この駄サイクルを繰り返す。正式に厳しい評価がされるコンペやコンクールには作品を出さず、一方的に発表できる個展はするという話…。

 

馴れ合いの中で評価され続けるから、自分は才能があると錯覚する。

ルカは色んな場所でこの駄サークルが色んな形で存在すると言いますが、

本当にリアルであり、私を含めた多くの方は、自覚はない&自覚を持ちたくない中でその駄サイクルの中で生きている。

 

そう思うと、なんでも良いのですが、自分の作り上げた何かが評価されたらそれで終わりではなくて、もっと優れた何かを作ろうとする向上心を持てる方、

身近な高評価に喜びつつも、その評価に囚われず前に進むことができる人間が、何か大きなことを何遂げることができるのでは?と 本作を読んで感じました。

 

しかし、そんな心の強さを持つ人間は殆ど存在しないのではないでしょうか。

誰だってルカのように、駄サイクルの中で生きているのは自覚しても、そのサイクルから抜け出すのは一朝一夕では出来ない。

そして多くの人間がサイクルの中に居ることさえ気づかない。

 

残酷な話に映ります。もしかしたら、世の中で「ウザい」と思われてしまう人間は、この駄サイクルの中で生きている。サイクルの中に居ることにすら気づかない人たちではないか!

さらに、本作を読んで薄ら笑いを浮かべる私、読者も、もしかしたらそんな「ウザい」人間の一人であり、気づかない内に他人から見たら最底辺に映る人間なのかもしれません。

 

胃がキリキリと痛くなってしまい、周囲の評価も合わせて、自分の納得した生き方をするのは本当に難しいことであると感じます。

 

グッさグッさと精神的にえぐられるような話が多いのですが、

ぐるぐると廻る青春のアレコレを、ユーモアたっぷりに描いた素敵な作品だとも思えたから不思議。